船イカ釣りに必要な道具

基本的なタックルは共通していますが、特に「仕掛け」の部分で各イカ種への対応が必要になります。

1. 竿 (ロッド)

イカのアタリを正確に捉え、多点掛けしたイカの重さにも耐えうるパワーと、手持ちでの操作性を両立した竿が求められます。

  • イカ釣り専用竿:

  • 長さ: 1.7m〜2.2m前後が主流です。短い竿は手返しが良く、長い竿は船の揺れを吸収しやすく、アタリが取りやすい傾向があります。

  • 調子: 竿のしなり方によって「ブランコ仕掛け用」と「直結仕掛け用」に大別されます。

  • ブランコ仕掛け用: 胴調子(6:4〜7:3調子)など、穂先から胴にかけてしなやかに曲がり、イカが触ったアタリを弾かずに乗せやすく、バラシにくいタイプ。

  • 直結仕掛け用: 先調子(8:2〜9:1調子)など、手元にアタリが伝わりやすく、積極的に掛け合わせに行くタイプ。イカが乗った際に引きを直接竿で止めるため、よりバットパワーが必要です。

  • オモリ負荷: 使用するオモリの号数に合わせます。一般的には80号〜200号程度に対応できるものが多く、スルメイカやヤリイカでは重めのオモリを使うため、負荷の高いものが必要です。

  • 素材: グラスソリッドや、グラスとカーボンを組み合わせたものが多く、粘り強さと感度を両立しています。

  • : シマノ「イカセブン」「バイオインパクト」、ダイワ「極鋭ヤリイカ」「メタリアヤリイカ」など。

2. リール

深いタナを探る場合や、多点掛けで巻き上げが重くなることを考えると、電動リールが主流です。

  • 番手: PEライン3号〜4号が300m〜500m巻ける、ダイワなら300番〜500番クラス、シマノなら1000番〜3000番クラスが一般的です。

  • スルメイカ/ヤリイカ/ムギイカ/アカイカ: 比較的深い水深(100m以上)を狙うことが多いため、PE4号が300m以上巻ける、巻き上げパワーのあるモデルが推奨されます。

  • マルイカ: 比較的浅場も狙うため、PE2号〜3号が200m以上巻ける小型軽量のモデルが人気です。

  • 特徴: ドラグ性能が高く、巻き上げパワーとスピード調整がしやすいモデルを選びましょう。カウンター機能付きだと、正確なタナ把握に役立ちます。

  • : シマノ「フォースマスター」「ビーストマスター」、ダイワ「シーボーグ」「レオブリッツ」など。

  • 大容量バッテリー: 電動リールを使用する場合、専用のバッテリーは必須です。予備もあれば安心です。

3. 道糸 (メインライン)

  • PEライン: 伸びが少なく感度に優れるPEラインを使用します。

  • 太さ:

  • スルメイカ/ヤリイカ/アカイカ: 3号〜5号が一般的です。深場や潮が速い場合は太め、そうでない場合は細めを選択します。

  • マルイカ/ムギイカ: 0.8号〜1.5号と比較的に細めを使用し、感度を重視します。

  • 長さ: 300m以上、できれば400m〜500m巻いておきましょう。不意の高切れや、深いタナを探る場合に備えます。

  • カラーマーキング: 10mごとの色分けや1mごとのマーカーがあるものだと、正確なタナ(水深)の把握に非常に便利です。

4. リーダー

PEラインの保護と、イカの足やスッテのカンナによるラインブレイクを防ぐために必須です。

  • フロロカーボンリーダー:

  • 太さ: 3号〜8号程度。狙うイカ種やPEラインの太さに合わせます。

  • 長さ: 2m〜3m程度。PEラインとの結束は、強度のあるFGノットやPRノットなどでしっかり行いましょう。

5. オモリ

  • オモリ: 船宿やポイントによって指定される号数が異なります。

  • スルメイカ/ヤリイカ/アカイカ: 80号〜150号(時には200号以上)が使われます。

  • マルイカ/ムギイカ: 30号〜60号が中心。

  • 形状: 基本は六角オモリや丸オモリ。潮の流れに応じて工夫することもあります。

6. 仕掛け

イカの種類や釣り方によって、仕掛けの構成や使うスッテ・エギの種類が大きく変わります。

  • ブランコ仕掛け: 親しいハリスでスッテ(またはエギ)を連結し、潮流になじませて自然に誘うスタイル。

  • 特徴: イカに違和感を与えにくく、口切れしにくい。初心者にも扱いやすい。

  • 主なターゲット: ヤリイカ、マルイカ、アカイカ、スルメイカ、ムギイカなど幅広いイカ種。

  • 直結仕掛け: 幹糸に直接スッテを連結するスタイル。

  • 特徴: イカがスッテに触れるアタリがダイレクトに伝わり、即座に掛け合わせやすい。多点掛けを狙いやすいが、バラシのリスクも高まる。

  • 主なターゲット: スルメイカ、ムギイカ、マルイカなど、積極的に掛けていく釣りに向く。

  • プラヅノ: 硬質プラスチック製のツノ。イカが抱きつきやすいように設計されています。

  • サイズ: 11cm〜18cm程度。ヤリイカは11cm〜14cm、スルメイカは14cm〜18cmが一般的。

  • カラー: 透明、夜光、ケイムラ、ピンク、ブルー、赤白、赤緑など、多種類用意しておきましょう。

  • 浮きスッテ: 布巻きや樹脂製の、水中で水平姿勢を保つスッテ。ブランコ仕掛けの枝スに付けることが多いです。

  • サイズ: 2号〜3号程度。

  • 主なターゲット: マルイカ、ヤリイカ、アカイカなど。

  • エギスッテ(餌木): 小型の餌木タイプ。マルイカ釣りのメインルアーです。

  • サイズ: 1.5号〜2.5号程度。

  • 水中ライト: イカの集魚効果を高めます。

  • カラー: 緑色、青色、白色などが使われますが、地域や状況によって効果的な色は異なります。点滅タイプと常時点灯タイプがあります。

  • 注意点: 船宿によっては使用禁止の場合もあるので要確認。

  • ヨリトリ器具: 仕掛けの上下に、糸ヨレを防ぐための強力なサルカンやヨリトリリングを配します。

7. その他のあると便利な道具

  • 竿受け (キーパー): 竿を船べりに固定し、安定させるための道具。

  • プライヤー: 針外しやラインカット、スプリットリングの開閉に。

  • ハサミ: ラインカットや、もしエサを使う場合はエサカット用。

  • グローブ: イカ墨やスッテのカンナから手を保護するため。

  • タオル: 手拭き用。

  • クーラーボックス: 釣れたイカを鮮度良く持ち帰るためのもの。イカが墨を吐くため、ビニール袋やジップロック、傘袋などを用意しておくとクーラーボックスが汚れにくく、イカもきれいに持ち帰れます。

  • イカ締め具: イカの鮮度を保つために、神経締めを行うための道具。

  • 歯ブラシ: スッテに付着したイカ墨や粘液を落とすのに便利です。

  • 水汲みバケツ: 手を洗ったり、船べりを流したりするのに便利です。

  • ライフジャケット: 安全のため必ず着用しましょう(多くの遊漁船で貸し出しがあります)。

  • カッパ (レインウェア): 波しぶきや雨対策。

  • 酔い止め薬: 船酔いしやすい方は必須です。

  • マグネット: 仕掛けの針(カンナ)を一時的に固定するのに便利です。

 


 

各イカ種を狙う際のポイント

 

  • スルメイカ/ムギイカ: 比較的深いタナを狙い、多点掛けを狙うことが多いです。直結仕掛けやプラヅノブランコ仕掛けが主流。重めのオモリを使用します。

  • ヤリイカ: 深場でブランコ仕掛けで狙うのが一般的です。プラヅノや浮きスッテを使用します。アタリが小さく、繊細な誘いが求められます。

  • マルイカ: 繊細なアタリを取り、積極的に掛けていく釣りが特徴。小型の浮きスッテやエギスッテ(直結、直ブラ、ブランコ)を組み合わせます。比較的ライトなタックルを使うことが多いです。

  • アカイカ(ケンサキイカ): プラヅノを使ったブランコ仕掛けで狙うほか、近年はイカメタルゲームも非常に人気です。夜釣りがメインになることが多く、水中ライトが有効な場合が多いです。

 


 

注意点

  • 船宿の指定: 最も重要なのは、乗船する遊漁船のルールと推奨タックルを事前に確認することです。使用するオモリの号数、PEラインの太さ、ハリ数、水中ライトの有無、仕掛けの種類などが細かく指定されている場合があります。

  • 予備の仕掛け: イカ釣りは根掛かりやオマツリ、サメなどに仕掛けを切られることが多々あります。予備の仕掛けやスッテは多めに持っていきましょう。

  • タナの把握: カウンター付きリールやラインのカラーマーキングを有効活用し、イカが釣れるタナ(水深)を正確に把握して攻めることが釣果に直結します。

  • 安全性: 船上での釣りは常に危険を伴います。船長の指示に従い、周囲に注意を払い、安全に配慮して楽しみましょう。

これらの情報を参考に、狙うイカの種類や釣り場の状況に合わせて準備を進めてください。美味しいイカをたくさん釣れることを願っています!